「ダンスは薬」~ドイツでそう言われている理由とは?

一般の人々に社交ダンスが広く普及しているドイツには~TANZEN IST MEDIZIN~(~ダンスは薬~)というキャッチフレーズがあり、そうしたタイトルの書籍も出版されています。

古くから社交ダンスが文化として生活に根付いているドイツではダンスと健康との関係を調べる様々な調査や研究が行われ、長年の活動で蓄積されたデータから、ダンスを踊ることが身体機能や脳の働きを維持することに役立ち、老化を防ぐことにつながることが広く認められています。また近年では日本国内でも、ダンスと健康長寿の関係に着目した研究が行われています。

それでは、なぜ社交ダンスは心身の健康に良い影響をもたらし、老化を防ぐことに役立っているのでしょうか?

ひとつ大きく取り上げられているのは、ダンスが全身運動と知的活動の組み合わせを同時に行うデュアルタスク(同時に二つ以上の課題に取り組むこと)そのものであるということです。

音楽を聴きながら、リズムの強弱に合わせて、時には身体を動かす速さを変化させながら、相手とともに手足の様々な動きを組み合わせて踊っていく社交ダンスでは、常に同時進行形で二つ以上の課題に取り組んで行くことになります。

加齢による思考力の低下や認知機能の衰えを防ぎ、認知機能を維持したり、一度衰えた認知機能を向上させるために、デュアルタスクを行う機会を持ち続けることがとても重要と考えられています。

音楽への注意、周りの空間への配慮、そして一緒に踊っている相手とのコミュニケーションといった社交ダンスを踊る上で自然と行っている様々な行為が脳への良い刺激となり、認知機能の維持や向上につながっていると考えられるのです。

身体的な面では、適度な負荷を伴う有酸素運動を継続して行うことにより筋肉量の増加や持久力を高める効果が見られます。また回転を伴う動作や後ろへ下がる動作など日常生活でなかなか行う機会が少ない動作を取り入れて動くによりバランス機能が鍛えられます。

ペアで踊るという社交ダンスならではの大きな特徴もとても重要です。相手との会話や、手と手がふれあうことによるスキンシップは、神経伝達物質のオキシトシンの分泌を促進させる効果があります。オキシトシンには不安や心配を緩和させてくれる働きがあり、副交感神経が優位に働くことで、ストレスが軽減され、心身ともにリラックスすることができます。

つまり社交ダンスを踊ることにより万病の元と言われるストレスを軽減し、身体の免疫力を高める効果が期待できるのです。

助川 太朗

参考文献:「認知症にならない!させない!世界実証メソッドを網羅!脳の名医が教える最高の脳活大全」

遠藤英俊、白澤卓二、宮崎総一郎、奥村歩共著

文響社 2021

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